vol.26 株式会社ビューティラボ 中野啓子さん(2018年6月)


化粧品会社での経験を活かし、化粧品や健康食品のコンサルを行う女性


伊藤:今日は、ありがとうございます。中野さんは化粧品業界で広報をされているイメージがありますが、どういう流れで今に至られているのか教えていただけますか?

中野さん:実は、私は広報ではなく、経営コンサルタントが仕事なんです。経営コンサルをするなかで広報の部分にも関わっているというのが正しいですね。大学時代は広告デザインに関わりたいと思っていて、広告代理店への就職を希望していました。しかし、35年前には女性に対して広告代理店の門戸が開いてなく、化粧品メーカーでデザイナー募集があったので、その会社に就職しました。

伊藤:もともと広告デザインのお仕事希望だったんですね。化粧品でデザインっていうと華やかなイメージがありますね。

中野さん:そうなんですが、実際、会社のキャリアはパッケージデザイナーがスタートで、メインは商品開発プランナーでした。パッケージデザインも、当時、男性上司からの指示を受けてそれを形にしていくことが求められましたが、おじさんの感性ではなく、女性のお客様のニーズを追求し続けていましたね。そして、ずっと広告をやりたいということを言い続けて、5年後にやっと広告に関われることになりました。

伊藤:5年ですか。結構長いですね。

中野さん:そうなんですが、実際、広告に関わってみると、広告に1回でかける金額が億単位なのを知って、これは若い女性には任せられないのだな、ということが分かりました。実際、私が行った広告の案件も10憶という数字だったんです。ただ、10憶使ってもそれ以上を回収できず、とても悔しい思いをしました。上司からは、そういうものだよ、と言われたのですが、自分としては広告での自信があったので、本当に悔しくて。

伊藤:その気持ちわかります。ただ、マスメディアの広告は効果測定もできないから、正確な数字もとれないですしね。それでどうされたんですか?

中野さん:広告がこんなに厳しいのであれば、広報は?と思い、上司に提案しました。それで、ゼロから広報を立ち上げることになったんです。それまでは、問い合わせがあったら、商品の貸し出しをしたり商品説明をしたりする方はいらっしゃったのですが、ちゃんとした広報はなくて。その方に聞きながら、広告代理店と仕事をしていました。ただ、雑誌の場合は持っていく先が違うということに最初気づかなくて。

伊藤:どういうことですか?

中野さん:広告代理店は出版社の営業部との付き合いです。でも、広報は編集部との付き合いですよね。今では、当たり前に分かることなのですが……。

伊藤:広告と広報の違いは、実は今でもご存じない方が多くて、編集部と営業部が雑誌に掲載されている意味を、セミナーで話したりしています。

中野さん:そうなんですよね。意外とご存じない方が多くて、私も出版社の営業部から編集部へ情報を渡してもらって、いくつか掲載いただいたのですが、その後が続かなくて苦戦しましたね。ただ、当時はメールではなく電話でしたので、電話をしたり顔を合わせていたりする間に、記事として月に100本くらい掲載されるようになったんです。記者の方とのつながりもできて、異動のときには次の担当者をご紹介いただいたり、異動された媒体で商品を紹介いただいたり。

伊藤:月に100本? すごい数字ですね。

中野さん:化粧品ってそういう商品なんですよ。常時おつきあいする大手出版社が12社あって、どの出版社も5~6誌の女性誌を出しています。だから40~50くらいの媒体の方との繋がりですよね。そして、小さくても掲載されれば一誌ですから。

伊藤:確かに。女性誌であれば、必ず何かしらの化粧品の記事がありますね。

中野さん:そうなんです。そして、その後、Web媒体が始まっていきます。

伊藤:女性のポータルサイトが一気に立ち上がりましたね。中野さんにとって、紙媒体とWeb媒体の違いってなんでしょうか?

中野さん:当時感じたことなのですが、やはり紙媒体が強いということです。Webは掲載された日は伸びるのですが、その日で終わってしまいます瞬間風速なんです。私は、商品企画から販促物を作って、お客様相談室での対応もするという、まさに入口から出口までの対応でしたので、お客様に「何をご覧になりましたか?」とお聞きすると、1年前の雑誌だったりすることもありました。Webでは、そういうことは起こらなかったですね。

伊藤:確かに、Webは検索をすれば出てくるけれど、偶然見つけることは少ないですね。それらのお仕事はどのくらいされていたんですか?

中野さん:中堅企業2社に在籍20年、その中で広報担当はのべ15年ですね。その間に1シリーズで年間200万個販売した実績や、対前年比180%年商180億円の売上実績を作り、ヘッドハンティングされて、化粧品会社を立ち上げたりしたのですが、化粧品について相談されることが多くなって、化粧品で成功する方法ということで、経営コンサルタントを始めることにしたんです。

伊藤:広報というのは、常にメインの仕事ではなく何かに付随していたお仕事なんですね。

中野さん:私にとってはそうですね。自分が広報担当として、テレビや雑誌に出ても広報をやっているという意識があまりなくて。ある時、商工会議所の方にセミナーをしてもらえないかというお話をいただき、私が経験してきた化粧品と健康食品はとてもニッチな世界なのでどうなのでしょう?と話したのですが、一般的に伝えられる話として、月に100誌に掲載したという実績が自分にあるということに気づき、初めて棚卸して明文化をしたんです。

伊藤:ご自身では、当たり前すぎて見えないことってたくさんありますよね。

中野さん:そうなんです。おそらく商工会議所の方にセミナーのお話をいただいていなかったら、自分のやってきたことをまとめることもなかったと思います。感性や感覚でやっていた部分が多かったので。

伊藤:化粧品は薬機法などの関係もあり、表現の仕方が難しいという印象がありますが、そのあたりはどうなのでしょうか?

中野さん:薬機法のセミナーもしています。そちらの方が多いですね。硬い話の方が得意だったりもします。今は、広告やパッケージに違法な表示をすると、消費者庁から指導の連絡が来るのですが、その時点ではすでに遅く、Webサイトに上がってしまっているんです。そういうことをやってしまう会社さんは、やはり何度も繰り返している。法規違反で指導される90%以上が化粧品と健康食品の企業です。そういうことを見ていたら、何かしらできるのではないかと。

伊藤:とても難しい時代ですね。まさに、自ら起こすリスクですね。

中野さん:ただ、リスクマネジメントに関して意識の低い会社さんは多いですね。化粧品会社は、とてもたくさんあって、私のところに相談に来られる会社さんは、とにかく商品が売れない、というのが一番の悩みで、きっとそれどころではないんですね。

伊藤:なんだか、広報の在り方が問われる時代ですね。商品を売るためにPRしたいけれど、それでリスクが発生してしまう……。

中野さん:確かにそうですね。鉄道会社や電話会社は、24時間365日体制で、誰かが監視しているわけじゃないですか? ただ、化粧品会社はそうではない。一人でやっていても株式会社であれば一社ですからね。それで、今、約2万社の化粧品会社があるといわれています。その多くは、良いことだけを伝えて、悪いものは上げない。ただ、SNSが発達した時代、そうはいかないんですよね。

伊藤:化粧品に限らず、広報に関わる者として一番力を発揮しなければならないのは、何か問題が起きたとき、事故が起きたときだと伝えています。ただ、どうしても、自分は関係ないと思ってしまう方が多いのも事実ですね。

中野さん:本当にそうですね。経営にも関わることなので、抑えるべきポイントはきっちり知っていないと、とても怖いです。

伊藤:中野さんにご相談できることってどんなことでしょうか?

中野さん:化粧品業界でずっとやってきましたので、この業界のことであれば、いろいろ。ただ、広報や広告の代理店はしていないので、コンサルという形です。チャネル別に売れる施策が違うので、チャネルごとのマーケティングリサーチから商品企画、販促、売れないときの相談や、販促物や広告について、薬機法違反や景品表示法違反にならない言い回しなどのご相談はお受けできます。

伊藤:医療、化粧品、健康食品については私自身は避けている部分です。法律も変わりますし、それこそ指導されたときには遅い、という。その分野で頼れる中野さんは、とても頼もしい方です。本日はありがとうございました。

株式会社ビューティラボ Webサイトhttp://www.beauty-labo.jp/


編集後記
広報の中でも、とても華やかでキラキラしている印象がある化粧品。ただ、それは表向きのことで、法律も厳しく健康にも関わる商材であることから、広報担当の方は本当に苦労されていると思います。長く化粧品会社でお仕事をされていたからこそ分かることがある。まさに入口から出口までされたから分かることがあるというのを改めて感じました。ご自身の肌のトラブルから、この化粧品に救われたということで化粧品会社を立ち上げたいという方は、たくさんいらっしゃいます。だから2万社もある。ただ、会社は立ち上げることが目的ではなく、続けていくこと。それも優良企業として。そんなことに気づかされるインタビューでした。ありがとうございました。