vol.24 株式会社中川政七商店 鈴江恵子さん(2013年1月)

株式会社中川政七商店 第二事業部 経営企画室 広報 販売部 通販課 課長 鈴江恵子さん Keiko Suzue
高知県出身。大学卒業後、時計メーカーに入社し営業職に就く。その後、食関連の仕事を経て、中川政七商店入社。「遊 中川」本店店長、生産管理などを経験した後、フランス滞在。帰国してから現在まで広報のほか、通販業務を担当。趣味は海外旅行と食いしん坊、真夜中のお菓子作り。
広報歴:3年
株式会社中川政七商店:http://www.yu-nakagawa.co.jp/
中川政七商店公式通販サイト:http://www.nakagawa-masashichi.jp/


パリと奈良。古き良きものを未来に伝えていく女性


伊藤:こんにちは。今日は鈴江さんに会いに奈良に来ました。よろしくお願いします。
鈴江さん:ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。

「遊 中川 本店」の本店で“花ふきん”を持って

伊藤:実は、鈴江さんが書かれている広報Blog のプロフィールを拝見して、この方はただ者ではないと思いインタビューをお願いしたんです。「高知⇒大阪⇒パリ⇒ベジエ⇒大阪と移り住み、ただいま奈良暮らし」と書かれてあって、きっと何かあると。今日は、いろいろ聞かせてくださいね。
鈴江さん:はい。なんでも聞いてください。

伊藤:では、最初のお仕事のことから教えてください。
鈴江さん:はい。大学卒業後は一般企業で営業職に就きました。ただ、学生時代に飲食店でアルバイトをしていて、「食」に関する仕事に興味を持っていたんです。ちょうどその頃、フードコーディネイターという資格ができて説明会に行きました。そこで、熱心に質問をしていたら、会場に来ていた方から声をかけられまして。

伊藤:それは、スカウト?
鈴江さん:食の勉強をしながら働かないか? と言っていただいて。

伊藤:どんな仕事だったんですか?
鈴江さん:飲食店専門の設計事務所でした。そして、その会社のフード部門で働くことになりました。

中川政七商店社屋

伊藤:希望だった「食」に関する仕事ですね。
鈴江さん:はい。ただ、続けていくうちに新たな世界にも興味が出てきて、そんなときに中川政七商店に出会ったんです。

伊藤:それは、いつ頃のことですか?
鈴江さん:2000年ですね。この本店(取材は、奈良市元林院町にある「遊 中川 本店」で行いました)に来たのですが、当時は13代目の中川もまだおらず、茶房になっている場所におばあちゃまが住んでいらっしゃったんですよ。

伊藤:その後フランスへ。何かきっかけがあったのですか?
鈴江さん:いえ。何かという具体的なことではなくて、女性って20代後半になるとこのまま今の仕事を続けていいのか、って考えることがあると思うんです。そんなときに、友人と食事をしながら同じような想いを話していて、旅行ではなくフランスへ行こうという話になったんですよ。普通、その場限りの話になることが多いと思うのですが、その日のうちに仕事を辞められるか、渡航や滞在はどうするかを決めて数ヶ月後に実行したんです。

伊藤:飲みながらの会話がフランス行きのきっかけに!
鈴江さん:おそらくあの時だからですね。タイミングや勢いもあってできたのだと思います。

渡仏のきっかけとなった友人と10年後のフランス旅行

伊藤:フランスには、どの位いらっしゃったんですか?
鈴江さん:ビザの関係で3ヶ月だけです。パリに滞在したのですが、語学力が足りないことを痛感したので語学学校に入りました。ほかはバゲットを食べ歩いたり、マルシェで食材を調達して料理をしたり、現地の方々と交流したり、日本での忙しい日々から立ち止まって投資というか感性を磨く貴重な時間になりました。パリは水と湿度が違うのでパンが本当に美味しいんです。

伊藤:楽しそうですね。ホームシックにはならなかったのですか?
鈴江さん:うまく言い表せないんですが、パリはとても肌にあう感覚があってずっと居たいと思ったくらいです。しかし、3ヶ月以上居ることができず帰国することになって。再び中川政七商店に戻ってきました。

伊藤:それは、鈴江さんが必要とされている、ということですね。
鈴江さん:そうだと嬉しいですね。ただ、出たり戻ったりしているので、代表の中川にブーメランと呼ばれています(笑)。

伊藤:次にパリに行かれるのはいつですか?
鈴江さん:日本に居たのが1年弱ですね。もう一度パリに行こうと心に決めていたので、今度は帰国することを考えずにマンションを引き払って出発しました。

プチトランが走るベジエの丘の上にあるサン・ナザール大聖堂

伊藤:一大決心ですね。鈴江さんにとって、フランスの魅力は何ですか?
鈴江さん:食の魅力はもちろん、文化、芸術、人、街などすべてなんですが、特に古いものを大切にする国ということでしょうか。建物もそうですし家具やバッグも上質なものを代々受け継いで大切に使っている。蚤の市には、魅力的なアンティーク商品がたくさんあります。

伊藤:確かにそうですね。しかし、決心をされてパリに行っても、長く滞在するのは難しいですよね。どうされたんですか?。
鈴江さん:何もチャンスがなければ帰るしかないと思っていたのですが、料理人のパートナーに出会いまして、主に日本人観光客向けに本格的なフランス料理をお出しし一泊していただくというシャンブルドットを行っていました。

伊藤:何年ほどパリにいらっしゃったんですか?
鈴江さん:出産、子育てもしながら4年間パリに滞在した後、南仏のベジエに移り1年間滞在し、2007年に日本に戻ってきたんです。5年間日本から離れたことで逆に日本の魅力もあらためて見直すことができたと思います。

ベジエから程近いナルボンヌの美しい海と空

伊藤:そして、再び中川政七商店へ?
鈴江さん:はい。中川が仕事でパリに来て会うことがあって、その時は「帰国する気はない」と言っていたんですけれど、帰ってきました(笑)。

伊藤:中川政七商店は鈴江さんの家のようですね。
鈴江さん:そうかもしれませんね。中川政七商店の商品とは、離れていた時期もフランスの友人宅にタペストリーが飾られていたり、キッチンで「花ふきん」が使われていたりして、なにかと出会う機会がありました。会社が5年間で予想以上の急成長を遂げていたことも戻るきっかけのひとつとなりました。受け入れてもらえたことにも感謝しています。

伊藤:そうなんですね。鈴江さんは自ら未来を切り拓いてチャンスをつかんでいかれる方ですね。あのときパリに行かなければ、フランスでの生活はなかったかもしれないですし。ご自身の思いを現実にされている。今後、フランスとの縁はありそうですか?
鈴江さん:実は、中川政七商店は江戸時代に創業し2016年に300周年を迎えるので、そのときにパリに出店するという話が出ています。

伊藤:やはり縁がありますね。まさに適任者ではないですか?
鈴江さん:パリは大好きな街なので、仕事でも日本との架け橋になれると嬉しいですね。

伊藤:どんな形での出店ですか?
鈴江さん:2012年8月に伊勢丹新宿店に出店した「大日本市」の2号店を検討しています。

「美しい暮らし」をコンセプトとする粋更kisara新丸ビル店

伊藤:「大日本市」は、どんなお店なんですか
鈴江さん:「日本の伝統工芸を元気にする!」というビジョンのもと、コンサル先を中心としたパートナー企業と共に開催する年3回の展示会からスタートしたもので、日本で唯一のコンセプトショップとして常設で出店しました。参加企業の商品と地元の特産品を集めた企画展も定期開催しています。

伊藤:ということは、フランスで日本のいろいろな地域の伝統工芸を手にすることができるということですね。
鈴江さん:はい。実現の日がとても楽しみです。

伊藤:ところで、御社にはいくつかのブランドがあるようなのですが、それを教えてください。
鈴江さん:そうですね。初めての方にはちょっと複雑かもしれません。まず、3つの総合ブランドがあります。そのうち店舗数が一番多いのが30周年を迎えリブランディングを控えている「遊 中川」。この奈良のお店が本店で、都内は、伊勢丹新宿店、ecute東京、玉川高島屋S・C、ソラマチなどに店舗があります。そして、“美しい暮らし”をコンセプトにした「粋更kisara」。都内は、新丸ビルと玉川高島屋S・Cに入っています。そして、会社名でもあり、“暮らしの道具”をコンセプトにした商品を扱う「中川政七商店」。こちらは大阪、京都、福岡に店舗があり、2013年春には都内にもオープンを予定しています。それ以外にも、奈良が靴下の生産量日本一であることから立ち上げた“くつしたブランド”の「2&9」や、まもなくデビューするハンカチブランド「motta」をはじめ、土産ものブランド「日本市」、鹿をモチーフにした「鹿の家族」ブランドです。そして、今後もさまざまな予定があります。

パリ出店を目指す大日本市 新宿伊勢丹店

伊藤:多くのことが並行しているんですね。これは、社長のお考えで?
鈴江さん:そうですね。話していてその日のうちに決まることもあります。

伊藤:スピードについていくのが大変ですね。そして、鈴江さんは、広報以外にも販売もされていますよね。
鈴江さん:はい。通販課の課長をしています。自社のオンラインショップと楽天ショップ、そして電話やFAXでの通信販売ですね。広報担当者の退職で兼務することになったんですが、広報の仕事にはとても魅力を感じています。広報、通販以外にも中川のスケジュール管理なども担当しており、この本店の店長をしていた時期もあるんです。

伊藤:いろんな形で会社を関わっていらしたんですね。本店をリニューアルされるということですが、オープンはいつですか?
鈴江さん:2013年4月27日です。築120年の積み重ねた歴史の趣きは残したまま内装を変えます。奥に蔵や機場があるのですが、それは残します。

機場

伊藤:蔵や機場があるんですか?
鈴江さん:はい。布蔵を改装した機場では手織り体験していただくこともできるんですよ。

伊藤:手織りというのは、麻ですか?
鈴江さん:はい。当社の原点は手紡ぎ手織り麻ですので。

「暮らしの道具」をコンセプトとする中川政七商店ラクエ四条烏丸店

伊藤:お店に入ったとき、素敵な商品があったので、帰りにチェックしたいと思っているんです。
鈴江さん:ありがとうございます。ぜひ、見ていってください。

伊藤:はい。今日はお話を聞かせていただきありがとうございました。フランスと奈良。遠い場所でありながら何か繋がるものを感じますね。そして、鈴江さんと会社との関わりはとても深いですね。300年続く会社、これからの展開を楽しみにしています。
鈴江さん:ありがとうございます。社内でどんどん新しいことが起きるので毎日がとてもアクティブです。こちらこそ、ありがとうございました。


広報ウーマン24時
6:00 起床、朝食、語学学習を兼ねてニュースチェック
8:30 自転車で出勤、週2回は全員で15分間の掃除
9:00 新聞、facebook、twitter、メールチェック
10:00 サンプル貸し出し、校正など媒体掲載対応
12:00 通販課の打ち合わせランチ
14:00 商談、面接など来客対応
15:00 リリース配信、社内カタログ校正、社長スケジュール調整など
18:30 帰社
19:00 夕食づくりと翌日夕食の下準備
20:00 メールチェック、広報ブログ投稿、スタッフTODO確認、翌日予定確認など
23:00 ニュースチェック、自分時間
25:00 就寝


編集後記
関西で広報ウーマンミーティングを開催するときは、関西の広報ウーマンにインタビューをしたい、と思っていました。そんなとき、Blogでプロフィールを拝見して、お話を聞きたいと思ったのが鈴江さんです。とても自然にお話されているのですが、フランスに住んで自分の好きな仕事をする、というのは憧れていても誰もができるものではないと思います。そして、ひとつの会社とこんなに縁が続くのも鈴江さんならではだと。古いものを大切にしつつ、今のテイストをいれて未来へ繋げていく。「和」が見直されている今、日々アクティブに活動されている鈴江さんに期待しています。(伊藤緑)