vol.22 カシオ計算機株式会社 木村舞さん(2012年11月)

カシオ計算機株式会社 広報部 木村舞さん Mai Kimura 29歳
東京都出身。大学卒業後、カシオ計算機に入社。広報部に配属され、海外広報をはじめとし、社内報などコーポレート系の広報業務を経験。2011年より、時計の広報に移り現在はG-SHOCKなど男性系のブランドを主に担当。趣味は、海外旅行と週一度フラメンコを踊ること。
広報歴:6年
カシオ計算機株式会社:http://casio.jp/
G-SHOCK:http://g-shock.jp/


自社に前例のない海外広報にチャレンジした女性


伊藤:こんにちは。初めまして。よろしくお願いします。
木村さん:こちらこそ、よろしくお願いします。

伊藤:今日は、木村さんが今のお仕事に就かれた理由やどんなお仕事をされているか教えてください。では、さっそくですが、学生時代はどんな仕事に就きたいと思っていたんですか?
木村さん:はい。高校生のときに一年間、オーストラリアに留学したことがきっかけで、海外に関わる仕事をしたいと思いました。それで、大学では幅広く知識を学びたいという想いもあって総合政策学部に入り、主には国際関係を専攻したんです。

伊藤:海外に関わる仕事というと、どういう職種を考えていたんですか?
木村さん:最初は、“海外といえば商社”だと思って、商社を考えていたのですが、正直、ビジネスモデルが私にとっては複雑に思えて、自分が働く姿をイメージできませんでした。それで、もっと広く職種を考えてみようと思ったんです。ただ、就職が厳しい時期で、かなり悩むことになって。多くの企業を調べました。

伊藤:例えば、どんな企業ですか?
木村さん:石油関係や素材メーカー、食品メーカーや旅行会社などです。いくつかの会社を調べていくうちに、日本の強さは、“モノづくり”だと思うようになり、日本のモノづくりを海外に伝えたいと考えるようになりました。

伊藤:それで、今の会社に。
木村さん:そうですね。この会社は、時計、デジカメ、電子辞書、計算機など自分の身の回りのある製品を多く扱っていて、その製品が海外でも評価されている。そう考えたときに、この会社で自分が仕事をしているイメージができ、こんなことをしたいというアイディアが浮かんだんです。そして、縁あって入社することができました。

伊藤:ということは、新卒でカシオ計算機に入社されているんですね。最初の配属はどちらですか?
木村さん:実は、最初から広報部だったんです。特に、広報を希望したわけではなく、営業に配属されると思っていたのですが、ちょうど海外広報に力をいれていくという時期と重なり、英語ができるということで広報部に。

伊藤:広報という仕事が、どういうことをするかイメージできましたか?
木村さん:いえ。正直、広報ってどんな仕事? って思っていました。配属当初、外部の広報研修に参加したのですが、その研修で一緒になった方に、新卒なの? と驚かれました。

伊藤:そうですね。新卒で広報って珍しい気もしますが、御社では多いのですか?
木村さん:はい。先輩たちもずっと広報部という人が多いですね。

伊藤:大手の会社さんですと、定期的に異動になるケースもあるかと思うのですが、そうではないのですね。木村さんは、入社何年目でしょうか?
木村さん:今年7年目になります。ただ、後輩は一人だけで、広報歴の長い先輩が多いので、日々学ぶことばかりです。

伊藤:海外広報に力をいれる時期での入社ということは、入社当時から海外広報を?
木村さん:はい。ただ、会社のことも、広報のことも分からない状態で、社内に事例がない海外広報を担当するのは、とても難しくかなり手さぐりの状態でした。

伊藤:確かにそうですねよね。海外広報は、どの企業もテーマになっているように思いますし。その状態から、どうやって始めていったのですか?
木村さん:PR会社さんと一緒に、FCCJ(社団法人日本外国特派員協会)に通って、記者の方との関係を作ることからスタートしました。まずは、記者の方との関係づくりからだと思っていたので。1年くらい経って、記者の方との関係ができるようになって、2年目くらいから結果が出るようになりました。もちろん並行して、会社のこと、製品のことを勉強しました。

伊藤:海外広報の目的は、海外でのカシオブランドの認知度を高めるということですよね。
木村さん:そうですね。海外で発行されている媒体に、カシオの製品やカシオ計算機という企業について掲載していただくためのPRです。海外の売上率は高いのですが、カシオブランドとしての認知は高くなかったこともあって、海外広報に力をいれることになったので。

伊藤:どんな情報でアプローチをしたんですか?
木村さん:最初は、何が記者の方に響くのかがわからなかったのですが、コミュニケートしていくうちに、例えば創業者のことに興味を持っていただけることなどが分かりました。弊社は、創業者が四兄弟なんです。その四兄弟が、それぞれ得意分野を持って立ち上げたのが、カシオ計算機なんです。

伊藤:具体的には、どんな得意分野ですか?
木村さん:創業当時は四兄弟のなかで、長男がマネジメント、次男が開発、三男が営業、四男が生産管理とうまく役割を分担することで事業を興してきました。そこが、特にヨーロッパのメディアに興味を持っていただきました。

伊藤:そういう視点は、社内にいると当たり前に思ってしまいがちですよね。
木村さん:そうなんです。ですので、記者の方とのコミュニケーションがとても大切だと学びました。こちらが伝えようと思っていたことではないことに興味を持っていただき、きっかけになることもある、と分かりました。

伊藤:今も、海外広報をされているんですか?
木村さん:いえ。2年前に部内移動があり、今は製品広報を担当しています。

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伊藤:では、海外広報を担当したなかで印象的なことを教えてください。
木村さん:はい。海外広報の担当になって4年目のことですが、アメリカの子会社から、現地媒体を日本に連れていきたいという話があり、日本でのプレスツアーを行いました。それまでは、日本からの発信ばかりだったのですが、海外の媒体が日本に来るということで、新たな視点になりました。日本で何を見てもらうか、どういう取材内容にするかを決め、アテンドをしました。その後、部内異動したこともあり、この仕事が私の海外広報の集大成的なものになった気がします。

伊藤:企業としての歴史はあっても、社内に経験者のいない海外広報を担当し、その部分を作ってきたということですね。そして、それを後輩に引き継いで、今は製品広報をされている。製品広報で扱っている製品は何ですか?
木村さん:私は、主には男性向けの時計を担当しています。メイン商品はやはりG-SHOCKです。

伊藤:G-SHOCKは、コアファンがとても多そうですね。広報をするうえで、ファンの方との関わりがとても大切なような気がしますが、どうでしょうか?
木村さん:まさにそうですね。社内の者より詳しい方もたくさんいらっしゃいますし。

伊藤:今はSNSでファンを作る企業も多いですが、そのあたりはどうされていますか?
木村さん:もちろんSNSも使っていますが、同時にリアルに顔を合わせるイベントも大切にしています。

伊藤:どんなイベントですか?
木村さん:2008年にアメリカでスタートした「SHOCK THE WORLD」です。もともとG-SHOCKは、日本より先にアメリカで人気になったのがきっかけで、逆輸入的に日本でブームになったこともあり、G-SHOCKにとっては特別な場所なんです。

伊藤:そういう姿勢、大切ですね。日本でもイベントをされるのですか?
木村さん:日本では12月に六本木ヒルズアリーナで「SHOCK THE WORLD TOUR 2012 in TOKYO -REAL TOUGHNESS-」というイベントを行います。

伊藤:盛り上がりそうですね。
木村さん:はい。昨年も開催したのですが、六本木ヒルズアリーナで開催するイベントでは、トップレベルの盛り上がりだと言っていただきました。

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伊藤:多くのファンをもつブランドの広報をするなかで、気を付けていることはありますか?
木村さん:G-SHOCKに関しては、「タフネス」というコンセプトからぶれないようにメッセージを伝えることを意識しています。単なるファッションウオッチではなく、「壊れない時計をつくりたい」ということを起点に生まれた実用性の部分やタフさがG-SHOCKとして普遍的なアイデンティティなので、そこの軸足をしっかりとさせることがコミュニケーションのうえでも大切だと考えています。

伊藤:育っているブランドの価値を守ることは、とても難しいことですね。特に知名度が高いブランドのファンには、いろんな思いの方がいらっしゃるので。
木村さん:確かにそうですね。ファンを裏切らないよう「タフネス」というブランド価値を守りながら、さらに良い意味でファンを裏切るような新しい仕掛けをすることでブランドを進化させていくという役割を背負っていると思います。

伊藤:作り手とファンを繋ぎ、伝えていくということですね。
木村さん:はい。私にとっての広報が、まさに「架け橋」になるということなので、作り手、ファン、メディアという三点を繋ぐ広報ができたら、と思っています。

伊藤:ひとつの会社でも、海外広報と製品広報という2つの視点から仕事をされてきたということで、広報に対する思いが多面的になられているように感じます。では、ここから、プライベートなお話を聞かせてください。仕事以外で何か続けていらっしゃることは?
木村さん:8年ほどフラメンコを続けています。

伊藤:フラメンコですか!? 情熱的な趣味ですね。きっかけは何ですか??
木村さん:スペインに旅行したことがきっかけで習い始めて、週に一度レッスンに通って、年に一度、発表会に出ています。

伊藤:楽しそうですね。
木村さん:踊ることも楽しいのですが、会社に入ってしまうと、会社と自宅の往復で外からの刺激が少なくなります。週に一度、レッスンに行くことで普段付き合わない方と交流ができるのが嬉しいです。

伊藤:そういうこともあるんですね。ほかには何かありますか?
木村さん:生まれ育った町が大好きです。私は、下町生まれの下町育ちなんですが、以前、行った自社のカメラのブロガーイベントの撮影舞台が、自分が住んでいるエリアでビックリしました。

伊藤:撮影舞台はどこだったんですか?
木村さん:谷根千です。

伊藤:とってもメジャーなエリアじゃないですか?
木村さん:ずっと住んでいるのでその魅力を知らなくて。本当にびっくりしたんです。子供の頃から知っている場所を撮影する人がたくさんいて。住んでいるとなかなか分からないですね。

伊藤:まさしく広報と同じですね。なかにいると分からない。外から見てこそ分かる自社や自分の町の魅力ですね。ずっと東京にお住まいなんですね。
木村さん:はい。そして、三代続いて江戸っ子というなら、私はまさに三代目なんです。全然チャキチャキしていないんですけれど。

伊藤:江戸っ子いいですね。下町で生まれ育った木村さんが海外広報を行っていた。日本と海外を繋ぐ人として適任ですね。今日は、ありがとうございました。


広報ウーマン24時
6:00 起床。朝ごはん、身支度
8:30 出社。新聞のクリッピングで関連記事をチェック、メールの対応など
9:30 雑誌社などからくる撮影用商品の貸し出し対応
10:00 リリース作成。営業や開発担当など様々な部署から情報収集
11:30 ランチ。社内に2つある社食で部内のメンバーと
12:30 取材対応のため羽村市にある技術センターまで移動
15:00 取材対応。商品の開発担当へのインタビュー
17:00 取材終了。技術センターから直帰
19:00 帰宅 夕食づくり。新婚なので30分でできる簡単なレシピを勉強中
23:00 就寝


編集後記
新卒から広報を担当するというのは、とても大変なことだと思います。それも、前任者のいない海外広報。海外広報については、私も明るくなくいろいろ教えていただきました。そして、G-SHOCKというブランドを守り育てるという立場。知名度があるブランドは、すでに会社だけのものではなく、ファンの力がとても大きく働くと思っています。そんななかで、ファンと会社と記者、その三者を繋ぐ、という言葉にとても、頼もしさを感じました。そして、フラメンコという趣味。お話していると、とても優しい印象の木村さんが、どんな踊りをされるのか、興味があります。(伊藤緑)