vol.19 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 鎌倉幸子さん(2012年8月)

公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 広報課課長 兼 岩手事務所図書館事業スーパーバイザー 鎌倉幸子さん Sachiko Kamakura 39歳
青森県出身。1999年3月、SVA(シャンティ国際ボランティア会)に入職。同年4月より、カンボジアへ赴任し、図書館事業を担当。2011年1月に広報課を立ち上げる。以来、広報課長を務める。東日本大震災発生後、岩手事務所を立ち上げ、津波で被害を受けた陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町で「いわてを走る移動図書館プロジェクト」を実施。本の貸し出しや皆が集まって語れるスペース作りを行っている。
広報歴:2年
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会:http://www.sva.or.jp/
いわてを走る移動図書館プロジェクト:http://sva.or.jp/iwate/


絵本を通して世界へ、日本に愛を届ける女性


伊藤:こんにちは。本日はありがとうございます。
鎌倉さん:こんにちは。こちらこそ、よろしくお願いします。

アメリカ時代 School for International Training 卒業式

伊藤:このインタビューでは、今のお仕事だけでなくお仕事に就かれるまでの経緯をお聞きしています。どのような形で今のお仕事に就かれたのでしょうか? また、2011年3月11日以降、日本人のボランティアに関する考え方が変わったように思います。その辺りもお聞きできれば嬉しいです。
鎌倉さん:はい。なんでも聞いてくださいね。

伊藤:では、さっそく。今の仕事に就かれるきっかけは何だったのでしょうか?
鎌倉さん:ずっと国際協力に関心がありました。これは、中学生のときに見たアフリカの飢餓について放送されたテレビ番組が、きっかけです。自分は学校に通えているのに、なぜこういうことが起こっているのか?ということを考えていました。

伊藤:中学生のときに原点があるんですね。
鎌倉さん:そうなんです。ただ、高校時代は部活に夢中で国際協力のことは忘れていたのですが、進学を考えたときに自分が何に一番ひっかかるのか? を考えたときに「国際協力」の道へ進みたい、と思ったんです。

伊藤:それで、その関係の大学に進学されたのですか?
鎌倉さん:そうなのですが、いったいどこで学べるのか?が分からず、その頃に読んだ進学に関する雑誌に「福祉の勉強をするなら、アメリカ」という言葉を見つけて、アメリカの大学に進学しよう、と思ったんです。ちょっと単純ですが。

伊藤:アメリカですか!? 親御さんはびっくりされたんではないですか?
鎌倉さん:そうですね。ただ、17年の人生で選んだ結果だったんです。3月に高校を卒業し、4月に渡米しました。まず英語の勉強をして、9月にウェストヴァージニア州のSalem International Universityに入学し、青少年福祉学を専攻したんです。

カンボジア スヴァイリエン州の事業視察

伊藤:英語は得意だったんですか?
鎌倉さん:いえ、渡米してから毎日3時間睡眠で猛勉強しました。その結果、TOFELの点数をとることができ入学しました。

伊藤:本気度がすごいですね。大学では、国際協力について学ばれたんですか?
鎌倉さん:入学してみたら、国際協力ではなく、ボーイスカウトなどアメリカ国内での活動の立て方やNPOの立ち上げ方など、国内のことが多かったんです。それで、卒業後、母校の学生課に就職しました。学生課といっても、仕事は、250人くらいの女子学生が住んでいる寮の寮母でいろんな経験をしました。

伊藤:例えば?
鎌倉さん:ホームシックになってトイレに薬の瓶を持って立てこもったり、別れ話でもめて警備会社から連絡が来るようなことがあったり、消防車を呼んでしまうような騒ぎが起こったりですね。

コンポントム州プラサットサンボー郡 「おはなしと図書館活動研修会」 開会式後に図書館活動推進

伊藤:さすがアメリカ、派手ですね。そのとき23才くらいですよね。
鎌倉さん:そうですね。ただ、何が起きても驚かなくなりましたし、食事と家賃がかからなかったので、そこでお金をためて、1年後にヴァージニア州のSchool for International Trainingへ入学し、異文化経営学を学び修士号を取りました。

伊藤:アメリカで勉強を続けていたんですね。目的が明確だったということですか?
鎌倉さん:いえ、そうではなくて、学べば学ぶほど国際協力という広い括りのなかで、自分が何を極めていくのか? について悩んでいました。そんなとき、カンボジアからの留学生の友人と二人で話す時間があり、彼の生い立ちを聞いたんです。それが、あまりに衝撃的で、私は何も応えることができずにいました。そのとき、1人の人の話を受けとることもできないのに、国際協力なんてできるのだろうか? と思いました。それと同時に、彼を友人だと思っていたのに彼の母国であるカンボジアのことを何も知らないことに気づきました。その日からカンボジアのことを知りたいと思い、授業のテーマをすべてカンボジアにしたんです。

伊藤:その方と話をしたことがきっかけになったんですね。
鎌倉さん:まさにそうですね。そして、勉強していくなかで言葉に関わることができないか? と思い始め、彼からカンボジアにあるシャンティ国際ボランティア会を教えてもらい、いきなりカンボジアの事務所に電話をして「働きたい」と伝えたんです。今思うと、日本にも事務所があったのですが、カンボジアに電話をしてしまいました。そして、1997年からインターンとい形でカンボジアで働き始め、上司が辞めたこともあり大学に籍を置きながら就職をしました。ですので、大学院を卒業するのに5年もかかってしまいました。

伊藤:カンボジアのどこでお仕事をされていたんですか?
鎌倉さん:最初は、首都であるプノンペンで寝泊まりをしていましたが、ベトナムやタイの国境近くでも仕事をしました。2004~2006年まではタイとの国境、バンテイミエンチェイで図書室を作る仕事をしていました。

シールを貼った絵本「はじめてのおつかい」(福音館書店)

伊藤:いつ日本に戻られたんですか?
鎌倉さん:2007年1月から東京事務所でカンボジア担当として勤務することになりました。2008年1月には、国内事業課という日本国内でできるプロジェクトの担当になりました。

伊藤:具体的には、どういうことですか?
鎌倉さん:シャンティ国際ボランティア会では、日本の絵本をタイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ、アフガニスタンに届けているのですが、日本語のままでは、届けることができません。そこで、出版社と作家さんと覚書をかわした出版物について、文字の部分にそれぞれの言語に訳したシールを貼って届けています。絵本を提供いただいた方に、シールを貼る作業をしていただき、絵本の最後には、この本を届けた人の名前を、その国の文字で書いていただいています。

東京事務所に集まった絵本

伊藤:提供される方が、シールを貼るという、ひと手間をかけるということですね。実際に届ける、という気持ちがわきますね。絵本の最後に名前を書くのは、なぜですか?
鎌倉さん:本を受け取ったときに、これは誰が送ってくれたの? という質問が多いということから名前を書いていただくことにしたんです。それによって、“本”が“○○さんが送ってくれた本”になるんです。

2011年10月1日 本を選ぶおばあちゃん

伊藤:ぐっと親近感がわきますね。これまで、何冊くらい届けているんですか?
鎌倉さん:1999年にスタートして多くの方の協力で、これまでに19万冊以上の絵本を届けています。昨年も、船便で一万冊以上の本を送りました。最近は、企業のCSRの取り組みとして、絵本を送ってくださる企業も増え50社になりました。明確にどこに届くか分かるということで選んでいただいているようです。また、社員のボランティア意識を高めたり、部署間の交流にもなったりしているようです。本社と支社で同じ活動ができること、屋外のボランティアだと参加できる方とできない方がいるということもあり平等性を考えたときに選んでいただいています。二人ペアになって、シールを切る人と貼る人というコミュニケーションの場にもなっているそうです。M&Aで合併した会社などは、業務以外の活動で絵本を通じて交流と持つ、それぞれの子供の頃のことを話すきっかけ作りにもなっている、と聞いています。

移動図書館車

伊藤:確かにそうですね。業務以外で社員が繋がるという意味もあるんですね。いろんな場で行われているんですね。
鎌倉さん:はい。「絵本シール貼り合コン」もありますよ。絵本にシールをはるという活動で、どんな人か分かるので、「この人は、子供に読み聞かせをしてくれそう」って思う女性もいるそうです。

2012年8月1日 六本木ミッドタウンにて

伊藤:確かに。ボランティア意識は、一緒に暮らすには大切なことですね。鎌倉さんは、広報という立場でこれらの活動を伝えているんですね。
鎌倉さん:そうですね。実はカンボジアに居た頃も、9年間ほぼ毎日ニュースレターを書いて配信していました。これは、日々現地で聞いたことや体験したこと、カンボジアの面白い話などを購読希望者の方にお伝えしていたもので、共感の和を広げたいと思って行っていました。このニュースレターのおかげで、日本に戻ってきたときに募金を集めることができたんです。

伊藤:募金のお願いというのは、非常に難しいことですよね。
鎌倉さん:商品を買うことと違って物が自分の手元に来るわけではないので、共感をしていただくことが必要なんです。ですので、とにかく情報を集めて届けるということをしていました。

2012年8月2日 神楽坂にて

伊藤:日本に戻られ活動されているなかで、2011年に東日本大震災が起きてしまうのですが、どのようなことをされたのですか?
鎌倉さん:実は、2011年の1月7日に、シャンティ国際ボランティア会は公益社団法人の認定を受けたので、そのリリースを行っていました。また、2011年が設立30年という節目の年だったので、2月には大口の募金をいただいている方に手書きで感謝状をお出ししました。その後、いくつかのイベントを企画していたときに震災が起きたんです。1995年の阪神淡路大震災のときにも支援活動をしていたことは業界では認知されていたのでマスコミからの電話が非常に多かったです。

伊藤:ということは、震災直後から事務所にいらっしゃったんですね。
鎌倉さん:はい。すぐに対策本部を立ち上げました。震災の翌日にはWebサイトで支援活動をすることを伝えカード決済での募金の口座を開けました。

伊藤:東北の被災地に行かれるスタッフの方もいらっしゃったんですよね。
鎌倉さん:東京からは被災地に入る許可がおりた16日からですが、副会長が山形に居たこともあり、15日から携帯電話が繋がる場所から電話をもらい、現地の情報を電話越しに聞きとっていました。そして、携帯で撮影した写真を送ってもらいリリースとして配信していました。

クヴァールレック小学校

伊藤:企業のなかには、自宅作業に切り替えていたところもありましたが、まさに動かれていたんですね。
鎌倉さん:はい。ただ、私は実家が青森で、数日、両親と連絡が取れないこともあり不安でした。また、副会長からの電話で聞く現地の様子は非常に辛いことが多かったです。しかし、情報を発信することが大切ですので続けていましたし、携帯が繋がらないときは、阪神淡路大震災のときの発生日から○日目は、という情報をリリースにしていました。そして、東京からスタッフが現地に向かう前日には、スタッフのインタビューを動画で撮影しました。自分自身が東北出身ということもあり、何かしたい、という思いはとても強かったです。

伊藤:鎌倉さんご自身も現地に行かれたのでしょうか?
鎌倉さん:私は、4月3日~7日まで、テレビの取材が入り、広報として取材対応をする必要があるということで気仙沼に行きました。取材に対しては非常に厳しい状況で、避難所によっては「取材禁止」と書かれているとこともありました。ただ、取材するテレビ側の方の気持ちも分かるので、これまでリリースで配信してきた情報を取材にきたテレビ局の方に渡したりもしました。

伊藤:両者の気持ちを汲み取る、大切ですね。一般の方でボランティアに行きたいという方も多かったのではないでしょうか?
鎌倉さん:そうですね。震災直後、多くの方から連絡をいただきましたが、ボランティアに慣れていらっしゃる方だけをお受けしていました。慣れていらっしゃらない方には、現地へ行くだけがボランティアでないことをお伝えしました。

伊藤:1年半近くが経った今、どう感じていらっしゃいますか?
鎌倉さん:正直、瓦礫に関しては、去年見るより今年見る方が辛いですね。まだ終わっていないということを実感します。そして、ボランティアというのは、日常のなかにあってこそ続けられると改めて思っています。そこで、今は気軽に参加できることを考えています。

伊藤:例えばどんなことですか?
鎌倉さん:公立図書館や書店が大きな被害を受けた地域、陸前高田市、大船渡市、大槌町、山田町にある40ヶ所の仮設住宅に本を積んでまわる「いわてを走る移動図書館プロジェクト」という活動をしています。本の貸し出し作業や飲み物を提供すること、それも十分なボランティア活動なんです。また「岩手のワインを飲んで復興支援」ということも行っています。瓦礫を撤去することだけがボランティアではなく、それぞれの方が日常のなかでできることをしていただく、それが継続できるボランティア・支援になると思っています。

伊藤:継続できる、ということは本当に大切ですね。具体的な活動を教えてください。
鎌倉さん:最近ですと、8月1日に、六本木のミッドタウン様のご協力で岩手を実際に走っている「移動図書館」カーを展示し、おはなし会を開催しました。そして、2日には神楽坂にある日本出版クラブ様のご協力で「いわてを走る移動図書館プロジェクトが神楽坂にやってくる!」というイベントを行いました。これは、多くの方に関心を持っていただくために、支援という切り口ではなく。親子で楽しむ、本好きの方が楽しむ、車好きな方が楽しむ、という3つの視点からリリースを作りました。「移動図書館カーで使っている時計は、車が揺れても大丈夫なように船舶用の時計なんです」というように、興味を持っていただくための切り口を常に探しています。そして「いわてを走る移動図書館プロジェクトが神楽坂にやってくる!」では、岩手事務所のスタッフによる「いわて移動図書館プロジェクト」の報告会も行いました。

伊藤:ボランティア・支援というと重く考えてしまうがちですが、このような形ですと参加しやすいですね。
鎌倉さん:そこはとても意識しています。また、シャンティ国際ボランティア会単独ではなく、ほかの企業様や団体様と一緒に行うことも積極的に考えています。

伊藤:日常生活では本が身近にあることは当たり前ですが、ないととても淋しいものなんでしょうね。
鎌倉さん:そうですね。「せめて本を読みたい」という声はよく聞きます。ただ、本は本だけあっても人に届かないのです。例えば、避難所に本が届いてもそれが誰宛のものか分からず、避難されている方が読みたくても読めない状況があったり、子供がいない避難所に絵本が5箱届けられたり、ということもありました。本がある場所に人が介在することで本は人に届きます。子供たちへの読み聞かせもそうですね。また、本を読むことを強制しないことも大切だと思っています。今、行っている移動図書館はカフェスタイルで、本を読みたい方には読んでいただく、おしゃべりしたい方は本を読まなくても大丈夫、という形です。

伊藤:今も本を集めていらっしゃるのですか?
鎌倉さん:はい。ただ、本は新品のみを受け付けています。古い本はブックオフ様と提携させていただいています。「宅本便」というシステムで、買取金額の寄付を希望すると、ブックオフオンライン様がその買取金額に10%を上乗せしてシャンティ国際ボランティア会に寄付してくださるという形です。寄付されたお金は被災地の方からリクエストがあった本の購入などに使っています。

伊藤:震災以降、気持ちが変わった方も多いように思います。いかがでしょうか?
鎌倉さん:確かにそうですね。今は地球の歩き方様と海外ボランティアツアーも行っています。大学生で何かしたいけれど、どうしたらよいか分からないという人にツアーに参加いただいています。カンボジアの小学校で子供たちと交流してもらうというものです。おかげさまで「子どもたちに絵本を届ける活動8日間」は、とても人気のツアーになっています。

伊藤:ツアーで参加できるということは敷居が低くなりますね。
鎌倉さん:そうなんです。絵本で国際協力ができるんだ、ということを知っていただきたいと思っていますし、このツアーをきっかけにしていただきたいと思っています。

伊藤:鎌倉さんにとって、今回の震災で感じたことがあったら、教えてください。
鎌倉さん:「平時の飲み友達が有時のお助け人」ということです。今回もいつも一緒に飲んでいる友人たちにとても助けられました。大変なときに「助けてください」と言っても、ほかの人も大変だからなかなか助けてもらえない。平時から付き合いのある友人たちが、本当に頼りになりました。

伊藤:人との付き合いが、いかに大切かということですね。
鎌倉さん:そうですね。「飲みに行く」そんな日常を一緒に過ごしている人たちが、強い味方でした。今は友人たちと岩手のワインを飲みながら話をしています。ぜひ、岩手のワインを飲んで支援をしてください。

伊藤:「飲むことが支援」であれば私も参加できそうです。今日は、ありがとうございました。


広報ウーマン24時
6:30 起床、ストレッチをしてオンのモードに切り替えます
7:30 出勤、Facebookやtwitterのチェックをしたり読書をしたりして過ごします
8:00 仕事は9時半スタートですが早めに出社。一日の仕事の段取りの確認、メールのチェックなど
9:30 全員参加の朝のミーティング。その日の予定のシェアや前日の報告がされるので、広報に役立ちそうな動きをチェック
10:00 プレスリリースを書き、配信
11:30 HPのリニューアルについての打ち合わせ
12:30 ラジオ番組でイベントの告知と活動の紹介をさせていただく
14:00 新聞の取材。「いわてを走る移動図書館プロジェクト」について
17:00 企業のCSRのご担当者と協働で行うプロジェクトの広報戦略の打ち合わせ
19:00 ブラッシュアップのため広報セミナーに参加
21:30 帰宅、パートナーと赤ワインを飲みながら遅めのディナー
23:30 就寝


編集後記
鎌倉さんには、2010年に行った広報のセミナーに参加いただきました。リリースについての講義をお受けになってすぐに、鎌倉さんが以前書いたリリースを書き直し再度配信したところ、新聞に掲載されたと聞き非常に嬉しかったです。社団法人の広報というのは一般企業とどう違うのか? という疑問もありましたが、一般企業よりも伝えるべき情報はあるのだと、今回の取材で感じました。絵本を届けるためには絵本を提供してくださる方が必要です。もっとこの取り組みを多くの方へ伝えたい、そう思いました。また、中学のときに「国際協力」に関わるということを決め、いろんな経験をしながらも、それを貫いていらっしゃる鎌倉さんの今のお仕事への思いを強く感じました。思うだけでは前に進めない、行動してこそ何かが始まる。そんな本気の思いが伝わる取材でした。(伊藤緑)