vol.4 馬渕舞さん:株式会社バンダイ(2009年8月)

株式会社バンダイ 馬渕舞さん Mai Mabuchi
1973年生まれ 東海大学文学部広報学科卒
1997年、新卒としてバンダイに入社。管理部門や、事業部門の営業企画を経て2000年に広報へ異動。HPや、社内報の制作を担当。
広報歴:9年
株式会社バンダイ:http://www.bandai.co.jp

 


自分が楽しいと思うことを伝えていく女性


伊藤:こんにちは。お久しぶりです。今日はよろしくお願いします。取材でもお会いしていますが、馬渕さんは第1回の広報ウーマンミーティングにも来ていただいた貴重な方です。
馬渕さん:はい、そうですね。こちらこそ、よろしくお願いします。

伊藤:さっそくお伺いしたいのですが、馬渕さんは、新卒でバンダイに入社されたとのことですが、バンダイを選んだ理由は何でしょうか?
馬渕さん:大学で広報の勉強をしていて、その関係で、最初は広告代理店や出版社を受けていたんですが、同じゼミの友人に玩具関係の会社を受けている人がいて、それを聞いて、玩具という道も面白いなと思ったんです。そこで、バンダイという会社を選びました。

伊藤:ご友人の影響なんですね。ところで、大学で広報を学ばれたっていうことですが、どういうことを学ばれたんですか?
馬渕さん:大手の広告代理店に勤めている先生からPRについて学んだり、CMなど興味のあることについて調べてレポートを提出したり、新聞・広告概論などもありましたね。

伊藤:広報について、大学でしっかり学ばれたんですね。ところで、馬渕さんが入社された頃は、就職氷河期だったかと思うのですが……。
馬渕さん:そうなんです。大学名や性別だけで判断されて入社案内を送ってもらえないこともありましたし、圧迫面接に近いこともありました。でも、バンダイはそういうことがまったくなくて、明るくて。面接をしていくうちに、この会社で働くことができたらいいなと感じました。

伊藤:入社されたあとは、大学で広報を学ばれたということで、すぐ広報への配属だったんですか?
馬渕さん:いえ。私自身が、イベントに興味があったので、広報は第3希望くらいだったんです。でも、実際に配属されたのは、管理部門で、会議資料などをまとめる仕事を1年間していました。管理部門なので社外の人と会うこともなくて、名刺交換することもなかったんですよ。社内の管理職の人とのやりとりがほとんどでした。

伊藤:そうなんですか。その後、広報に移られるまでどんな部署を経験されたんですか?
馬渕さん:広報に異動したのは4年目です。それまでは、常務の秘書。また、常務が事業部門にいたので、その部門である事業部の企画のマーケティングプロモーションチームで少しプロモーションに関わりました。そして、その後、プロモーションや営業事務を経て広報に異動になったんです。

伊藤:広報への異動は自然な形で?
馬渕さん:いいえ。異動願いを出していました。

伊藤:それは、入社してから、ご自身が学んだ広報についてやってみようという気持ちになれたということですか?
馬渕さん:そうですね。

伊藤:広報に異動して、最初はどんなお仕事をされていたんですか?
馬渕さん:最初は、取材の同席などですね。それと、バンダイには、紙の社内報のほかに映像社内報というのがあるんですが、それが、広報に新しく入った人の登竜門で、映像の取材をしたりニュース原稿を読んだりするんですよ。

伊藤:映像社内報ですか。新しく広報に入った人が担当するのはなぜですか?
馬渕さん:広報担当者は、社内で顔を知られていた方がいいということからです。ですので、社員全員が見る映像社内報で社員に顔を知ってもらうんです。また、ニュースを作ることで会社のことを知ることができるということもあります。

伊藤:なるほど。新しく広報に入った人には、ちょうど良いということですね。映像社内報の内容はどんなものなのですか?
馬渕さん:トップからのメッセージと、1ヶ月に起きたことをニュース形式で伝えること、11部門ある事業部の新商品紹介コーナーなどです。ほかの事業部がどういうことをやっているのかということは、意外と分からないので映像社内報で伝えています。また、各地でイベントをやっているので、その報告もあります。社員がすべてのイベントにいけるわけではないので、どのくらい盛況だったかを伝えるようにしています。

伊藤:これは、今も新しく広報に入った人が行っているんですか?
馬渕さん:そうですね。

伊藤:ちなみに、今広報は、何名体制なんでしょうか?
馬渕さん:女性4名、男性2名の6名体制ですね。

伊藤:やはり、女性が多いんですね。
馬渕さん:なぜか女性が多くなりますね。比較的、女性に向いているということかもしれません。

伊藤:確かに女性に向いているとおっしゃる方もいらっしゃいますね。ちなみに、大手企業さんは、定期的に広報の方が異動になることもありますが、そのあたりはどうですか?
馬渕さん:基本的に異動は少ないですね。本当は、キャリアアップのために、新しい部署に異動することも大事だと思うのですが、広報は、記者さんなど人との関わりが大きいので、個人的には比較的長く担当した方がよいと思っています。

伊藤:確かに。仕事の引き継ぎは事務的にできますが、記者さんとの信頼関係は、簡単に引き継げませんものね。ところで、今、馬渕さんはどんなお仕事をされているんですか?
馬渕さん:社内広報と社外広報の両方を行っています。具体的には、紙の社内報作りと、Webサイトの更新。そして、子供たちの会社見学の受け入れの手配を行っています。会社見学については、社外広報というよりも社会貢献に近いですね。幸い、お問い合わせを多くいただいていまして、開発担当者の業務に支障がない範囲でお受けしています。ただ、メーカーなので物作りそのものが見られると思われるのですが、実際作っているのは、海外であったり、国内の工場も静岡なので、本社で物作りの現場を見てもらうことができないのが残念です。そこで、物作りの課程を映像にしたものを作り、見てもらっています。

伊藤:工夫されているんですね。この子供向けの会社案内は、とても分かり易くていいですね。
馬渕さん:これは、子供たちからおもちゃってどうやって作るんですか? と質問を受けることが多かったので作ろうということになりました。これまでよく問い合わせをいただいていたことや子供たちに知ってほしいと思っていたことを1冊にまとめた感じです。

伊藤:ちょうどノートみたいな形で、子供たちにも親しみがありますよね。
馬渕さん:そうなんです。形もそうなんですが、内容に関しても、小学生向けのWebサイトや雑誌の記事を書かれている編集プロダクションの方にお願いをして作りました。どうしても、私たちが書くと内容が大人向けで、単にひらがなが多いというものになってしまうのですが、子供たちは、漢字にふりがなをふったものとか、敢えて英語をつかってそれにふりがなをつけた方が格好良くてぐっとくるって思うそうなんです。それに、子供たちはゲームをやっているので、「攻略」という文字は読めるとか(笑)。

伊藤:それは、実際に子供向けの原稿を作っている人ならではの意見ですね。少しお話が変わるのですが、ヒット商品になった∞シリーズについて教えてください。
馬渕さん:∞シリーズのリリースは、今年の6月27日に発売された「∞缶ビール」「∞ソーダ」まで、私が担当しました。

伊藤:∞シリーズは、かなりシリーズ化されていますが、第何弾まで出たのですか?
馬渕さん:シリーズとしては、第4弾までですね。「∞プチプチ」、「∞エダマメ」、「∞ペリペリ」、「∞缶ビール、∞缶ソーダ」ですね。そのほかにも、「∞プチプチ ぷち萌え」や「∞エダマメ 豆しばバージョン」なども出しています。

伊藤:これは、ホント大ヒットですよね。私は、個人的に「∞缶ビール」がお気に入りです。このシリーズのPRの仕方には、どんな工夫をされたんですか?
馬渕さん:「∞プチプチ」を発売するときは、どのくらいの反響があるのかが、見えていなかったのが正直なところです。ただ、6月の「東京おもちゃショー」で発表したいということがあり、「9月下旬発売」というプレスリリースを2007年6月22日に出しました。そうしたら、思いのほか反響が大きくて、これは、イチ押しとしておすすめしていこうという流れになっていきました。ただ、発売までは、ユーザーの方に楽しみに待っていただきたかったので、サンプルを触る機会を作らなかったんです。でも、高まった話題が9月の発売までに、尻すぼみにならないかが心配で8月27日に「ザ・たっちの二人が、∞プチプチに初タッチ」というマスコミ向けのイベントを行って、そのときに、プレスの方にだけ「∞プチプチ」に触れていただいたんです。この商品は触ってしまったら満足してしまうので、とにかく発売日までは、一般の方は触ることができないということがポイントでしたね。

伊藤:すでに「∞プチプチ」は、300万個近く売れていると聞いていますが。
馬渕さん:そうですね。昨年、おもちゃ大賞の「トレンディ・トイ部門」を「∞エダマメ」が受賞したことで、また人気になりました。

伊藤:∞シリーズは、価格的にもちょっと買ってみようと思う金額ですし、プレゼントするのもいい商品ですね。
馬渕さん:価格は、担当部門が決めているのですが、確かにちょっと買ってみようという価格にできたのは良かったですね。営業と相談していくつ売れると利益がでるということも考えるのですが、とにかく買いやすい価格ということで、今回は成功したと思っています。

伊藤:また、シリーズ化になったのもいいなと思うのですが、最初からそういう構想だったんですか?
馬渕さん:そうではなくて、「∞プチプチ」が大変ご好評いただいたのが大きかったです。また、記者の方からも、「こういうのはどうですか?」というご意見をよくいただいたんですよ。そういうこともあって、何かほかに本当は1回しかできないのに、無限にできたら嬉しいものはないかと考えました。そこからシリーズ化していったんです。そして、「∞アイデアコンテスト」も行いました。約10,000件の応募がありまして、「∞チョコレート」が選ばれました。これはチョコレートをパキパキと割る感覚を無限に感じたいというものです。「∞チョコレート」は、商品化に向けて現在検討中です。

伊藤:一般の方の参加もあったんですね。自分が考えたものが商品になったらすごく嬉しいですね。そして、すごいといえば、今、お台場の潮風公園に立っている1/1ガンダムもすごいですね。これは、どういう形で、バンダイさんが関わっているんですか?
馬渕さん:今年は、ファーストガンダムの放送から、ちょうど30年なんです。そこで、ガンダム30周年プロジェクトの一環での「GREEN TOKYO ガンダムプロジェクト」の取り組みなんです。ですので、関わっているのは、バンダイナムコグループです。これまで、1/1というのは、横になったものや、上半身だけのものはあったのですが、立ったということでリアルなガンダムを体感していただくことができていると思います。

伊藤:私は「めざましテレビ」を見ているんですが、作られて行く様子を見ていて、とても気になっていました。
馬渕さん:「GREEN TOKYO ガンダムプロジェクト」は、テレビや新聞でも大きく報道されています。本当に多くの企業やガンダムファンの人に支えられているなと、と感じています。

伊藤:バンダイさんでは、具体的にどんなことをされているんですか?
馬渕さん:30周年記念のプラモデルを制作しています。潮風公園にある1/1バージョンもあるんですよ。ちゃんと台座も付いているんです。ガンダムについては、音楽やゲームなどのグループ会社とのグループ横断プロジェクトがあって、そこと一緒に動いています。

伊藤:いずれにしても、ガンダム世代としては見逃せませんね。ほかには、最近ホットな商品は何ですか?
馬渕さん:クックジョイシリーズが人気ですね。弊社では2007年にのり巻きが作れる「のりまきまっきー」と餃子やワンタンが作れる「餃子メーカーくるりんパオ」を発売していますが、お子さんだけでなく、ホームパーティをする方に人気です。

伊藤:確かに、今、調理玩具は人気ですね。そのなかでも、何を作っていくのか? またどういうタイミングで発表するのか、というのは本当に考える必要がありますね。
馬渕さん:このシリーズは、「∞シリーズ」と同じく、おもちゃショーの前にリリースし、おもちゃショーで話題になりました。

伊藤:そういうことを見極めるのが大事なんですね。そこで、お伺いしたいのですが、今、広報を目指している女性が多いようなのですが、広報とはどんなお仕事だと考えていらっしゃいますか?
馬渕さん:そうですね。会社のことを、社内にも社外にも等身大に正しく伝えていく、過大評価もせず過小評価もせずバンダイという会社を正しく知ってもらう。そのタイミングや方法を工夫してPRしていく仕事だと思っています。

伊藤:では、どういう人が向いていますか?
馬渕さん:ポイントにしているのは、誠実さとバランス感覚ですね。タイミングも大切になるので、社会で何が起こっているかを把握することも大事です。そして、会社全体を見て、どこを押し出していくか考えたり、この部分があまり出ていないので、出していこうと考えたりすることも必要です。売れているから、そこだけというのではなく、いくつかの事業を展開しているので、幅広く行っていることを知ってもらうようにします。また、やりすぎてはいけない部分もあるので、事業部の宣伝担当ともうまく連携をすることも必要ですね。

伊藤:確かに、売れている部分だけを押すのは簡単ですが、会社全体を見るといのは、誠実さやバランス感覚がないとできませんね。では、広報の仕事をやっていて、楽しいと思うことはどういうことですか?
馬渕さん:バンダイが好きだと言ってもらえると嬉しいですね。あとは、自分が楽しいと思うものの楽しさを伝えていることです。消費者感覚で伝えることができるのもいいですね。

伊藤:消費者感覚、大事ですね。では、最後にプライベートなことを少しお聞きしたいと思っています。仕事以外で、興味のあることはなんですか?
馬渕さん:舞台を観るのが好きです。特に、宝塚歌劇が。ほかにも、ミュージカルはよく観ます。

伊藤:どのくらいの割合でご覧になっているんですか?
馬渕さん:今月は、エンタメ強化月間になっていまして、昨日も観て、明日も観るなんて感じです。ただ、そのために、仕事をする日はすると決めてバランスをとっていますね。

伊藤:演劇を見ることで、広報に生きることはありますか?
馬渕さん:バンダイは、エンターテインメントを提供する会社、夢や感動を与える企業なので、演劇を楽しむことで、人がどういうことに感動するのだろう? 楽しいと感じるのだろう? ということを感覚的に、感じることができることですね。あとは、ストレス発散でしょうか?

伊藤:エンターテインメントという部分で繋がっているんですね。
馬渕さん:おそらく(笑)。あとは、フィギアスケートを見るのも好きです。とにかくライブで何かを観るのはいいですね。

伊藤:お仕事とプライベートのバランスをしっかりとっていらっしゃるから、広報ウーマンとしてもバランスがしっかりとれていらっしゃるんですね。私も仕事をするときは徹底的にして、遊ぶときは遊ぶ、ということを見習いたいです。今日はありがとうございました。


広報ウーマン24時
6:30 起床
各局のニュース・情報番組をチェックしながら、朝食・入浴
8:00 出勤
8:45 出社、朝礼
9:00 新聞・メールチェック、各種承認業務
10:00 取材 商品開発担当へのインタビューや商品撮影のアテンド
12:00 昼食 チームのメンバーと情報交換をしながら社員食堂でランチ 社員食堂の取材もよく受けるので、実際に自分でも色々なメニューを試してます
13:00 電話対応、リリース作成など
16:00 社内打ち合わせ(今後の商品PR方法や、情報収集)
17:00 電話対応、HP確認業務や事務処理
20:00 退社 同僚や、プライベートの仲間と食事をすることが多いです。観劇をする日は、定時(17:30)に退社して、劇場へ直行します
23:00 帰宅 録画していた番組をチェックしながら、掃除・洗濯などをして入浴
24:00 就寝


編集後記
宣伝会議社の「PRIR(現・広報会議)」で、取材を始めたばかりの頃、お伺いしたのが、バンダイさんでした。会社が、浅草にあることをそのとき初めて知りました。そして、会社のビルの外にキャラクターがあることに驚き、エレベーターのアナウンスの声(いろんなキャラクターの声です)にも驚きました。なんて素敵な会社なんだ! と思いました。そのとき、馬渕さんにお話をお伺いしたのですが、取材に慣れていない私にとても親切に対応してくださいました。あれから4年。広報ウーマンミーティングの第1回にも来ていただき、また、ほかの取材でもお伺いするなど、お会いする機会はあったのですが、ゆっくりお話をさせていただいたのは今回が初めて。とても、柔らかく優しい方で、任せて安心という信頼感があります。そんなところ、本当に見習いたいです。(伊藤緑)

photo by eiji yamagata(社内写真)