vol.3 上村嗣美さん:株式会社サイバーエージェント(2009年7月)

株式会社サイバーエージェント 上村嗣美さん Tsugumi Uemura
1978年生まれ 法政大学経営学部卒
2000年、新卒としてサイバーエージェントに入社。半年間、経理を勤めた後、社長秘書へ。
社長秘書と兼務で広報を担当。広報部門立ち上げメンバーとして、企業広報・サービス広報・グループ広報全般を担当。
広報歴:7年

株式会社サイバーエージェント:http://www.cyberagent.co.jp/
Ameba:http://www.ameba.jp/


創設期から会社を見てきた女性


伊藤:こんにちは。宣伝会議社「PRIR」の取材では、お世話になりました。今日もよろしくお願いします。いつの間にかサイバーエージェントビルができたんですね。受付がとてもポップで印象的でした。
上村さん:そうなんです。ビルの一棟借りに伴い、ビル名をサイバーエージェントビルとして受付を新たに設置しました。受付のデザイン決定には広報もジョインし、コーポレートカラーであるグリーンを基調に写真映えする雰囲気になるように意見出しをしたんですよ。さまざまなグッズを展示しているほか、ロゴであるAmeba型のソファやアメーバくんのフィギュアを置いています。

伊藤:では、さっそくお話をお伺いしたいのですが、上村さんは新卒でサイバーエージェントに入られていますが、どういうきっかけだったのでしょうか?
上村さん:学生時代、広告営業の仕事がしたくて、リクナビで検索して見つけたんです。1999年当時は、まだインターネット広告の市場も小さく「インターネット広告ってどんなものだろう?」と興味を持ってセミナーに参加したのがきっかけでした。

伊藤:そうなんですか。その当時のサイバーエージェントは、まだあまり大きな会社ではなかったと思うのですが、迷いはなかったんでしょうか?
上村さん:そうですね。1999年当時は、まだ社員数が20人くらいの規模でした。でも、セミナーで話を聞いてネット広告に将来性を感じたのと、自分たちがこれから市場を作っていくんだという会社の志に惹かれたんです。なにより、この会社で自分が仕事をするイメージが沸いたため、サイバーエージェントを第一希望にしたんです。

伊藤:まさしく人の力ですね。それで、サイバーエージェントに内定が決まってからは、どんなことをされていたんですか?
上村さん:内定をいただいてから、入社までの間、内定者アルバイトをしていました。管理部門で人事や経理、総務のアシスタントをしていたんです。

伊藤:事務のお仕事を?
上村さん:そうなんです。ちょうどその時期に会社に上場の承認がおりるなどがあって、会社がかなり注目を集め始めていたんです。それを近くで見られたことが、実は広報を希望するきっかけになったんです。

伊藤:それは、どういうことですか?
上村さん:当時の史上最年少上場社長ということで、藤田への取材も多かったですし、インターネット広告も注目を集め始めていて取材が増えていまいた。それを近くで見ていて、会社を世の中に広く知ってもらう広報やIRに興味を持ったんです。

伊藤:職種の方向転換ですね。
上村さん:そうでうね。1999年9月から翌年の3月まで、内定者アルバイトをして2000年4月に入社しました。入社後の1ヶ月研修の後に配属面談があるのですが、その時に広報をやりたいと伝えました。

伊藤:それがすんなり通ったということですか?
上村さん:いえ、そういうわけにはいかなくて。さすがに、新卒に広報を任せるわけにはいかないということで、まずは経理との兼務で広報をやるということになりました。私が簿記2級の資格を持っていたことと、数字の勉強をすると意味もあってですね。でも、このころの仕事は兼務といっても95%くらいが経理の仕事でした。

伊藤:でも、管理系への配属だったんですね。それに兼務といえど広報に足をちゃんと入れているのがすごいです。
上村さん:この頃は、広報といっても取材にたまに同席したり、取材の調整をしたりのアシスタント業務だけでしたが……。

伊藤:でも、そこから広報分野へ進んでいくんですよね。
上村さん:それが、入社半年後に社長秘書にならないか? と言われたんです。

伊藤:入社1年目で社長秘書ですか? その頃から藤田社長はかなり注目をされていましたよね。お受けになったんですか?
上村さん:正直、秘書というのは自分のキャリアの中でまったく考えていなかったので戸惑いました。ただ、せっかく声をかけてもらったのであれば、自分のできることはやろう、と思って受けることにしました。その頃には100人規模の会社になっていましたから、経営者の近くで働けるのは大きいと思いましたし。ただ、それまで経理という仕事がメインだったので、ビジネスマナーなどがまだしっかり体に入っていなくて、本を読んだり他社の秘書の方のメールや電話のやりとりを参考にしながら学びつつ仕事を進めていきました。

伊藤:プレッシャーはなかったのですか?
上村さん:最初はありました。自分が失敗すると経営者に迷惑がかかるので、そこは本当に注意をしましたね。そして、自分の仕事の価値は経営者がやるべきことにどれだけ集中する環境を作ることができるか、ということだと思っていたのでそういう環境を作るように努力しました。

伊藤:新卒で社長秘書。それも時の人の秘書というのは、すごく大変なことのように思います。秘書の方は、ほかにもいらっしゃったんですか?
上村さん:いえ。一人でやっていました。ただ、社長秘書をさせていただいたおかげで経営者の考えを理解しやすくなったのが、後々の広報にも生きていると思います。そして、秘書になって1年目からリリースの配信など広報の仕事も行うようになったんです。そして、秘書になって2年目くらいからは、秘書業務と兼ねて企業広報も担当していました。今でこそ、いろいろな切り口で当社を取り上げていただく機会は多いですが、当時は藤田への社長取材がほとんどだったので、取材アレンジをしたり、原稿確認をしたりという広報の仕事をやり始めたんです。

伊藤:確かに、アレンジも原稿確認も経営者の近くに居る人が行った方がスムーズですよね。すごく自然な流れだと思います。
上村さん:そうなんです。社長や経営者との距離で苦労される方が多いと聞きますので、秘書から入っていけたことは、考え方や方針を近くで見て理解しているという面で本当にラッキーだったと思います。

伊藤:確かに大きい会社になるほど、経営者の考えが伝わってこないことで悩まれる広報の方は多いですね。
上村さん:そういう方は大変だと思います。私は秘書という職種で信頼残高を重ねていったので、原稿に関しても、社長の最終チェックはいらないよ、任せるのでよろしく、と言ってもらえるまでになりました。2004年頃には秘書と広報の仕事を割合でいうと、秘書が3.5、広報が6.5くらいになっていましたね。

伊藤:秘書業務も慣れてきたことで、広報業務に力をいれることができるようになったんですね。
上村さん:そうですね。また、会社が大きくなるにしたがって、自分の仕事も広がっていったので、自分自身の成長にもなりました。そして、会社の設立の時期と近い時期に入社しているので会社の歴史を語ることができるのも良かったです。1年、2年の変化が大きい業界・会社なので、仕事をしながら歴史を染みこませていけるのが大きかったですね。

伊藤:ところで、Amebaが始まったのはいつですか? ブログサービスが始まるとその取材も増えるのではないかと思うのですが。
上村さん:Amebaが始まったのは、2004年9月です。ブログ自体、今後大きく伸びるだろうということから、当社の注力事業と位置づけていました。それと機を同じくして、2005年4月に私が広報の専任になり、Ameba含め広報に力を入れることになりました。

伊藤:広報はどんな風にされていたんですか?
上村さん:事業部と連携をしてネタ探しをすることはもちろんですが、広報からの仕掛けも必要だと感じていたので、最初に2月6日をブログの日にするということをしました。

伊藤:記念日はやはり重要ですね。広報でネタを作って記事にしてもらうというのは、本当に大切だと思います。この頃も、藤田社長とは定期的に広報についてミーティングなどを行っていたんですか?
上村さん:当時、2週間に一度、藤田や広報メンバーでミーティングをして、Amebaをどう広めるか? について話し合っていました。有名人ブロガーの方を表彰する「BLOG of the year」や有名人ブロガーの動画番組をWebで公開する原宿の「AmebaStudio」というのは、その話し合いのなかで出てきたものです。

伊藤:BLOG of the yearといえば、ワイドショーで必ずニュースになりますよね。
上村さん:でも、BLOG of the yearについて、最初に提案した時は、藤田にダメだと言われたんですよ。でも、しばらくして、BLOG of the yearを行えば、こういう風に露出されて、「ブログ=Ameba」という認知にもなるということを伝えたら、やってみたらということになったんです。ただ、その時点で10月という時期だったんです。アワードの表彰といえば年末じゃないですか? ですから急ピッチで準備を始めたんです。ほぼひとりで準備と当日の運営をやりましたね。今では、もっとできたのではないかという反省点がたくさんありますが、その後2007年、2008年と続くイベントになったことは良かったと思っています。

伊藤:やりがいと大変さは、やはり両面にある感じですね。ところで、広報の仕事は華やかなイメージがありますが、その点についてはどうですか?
上村さん:正直、地道な仕事だと声を大にして言いたいです(笑)。広報は、広報担当者だけでできる仕事ではありません。モノやサービスといった、広報ネタがあって協力をしてくれる社内の人がいてこそ、広報ができる。ですから、事業部や他部署と連携をして広報のネタを探したり、逆に広報から事業部に提案してネタを作り出したりすることが必要です。ただ、事業部には事業部の目標、例えば売上やユーザー数、PVなどがあるので、そこをこちらも理解して、広報することでどれだけ事業部に貢献できるかというのを伝えるようにしています。そして、事業部の人に、協力していただいた分は必ず還元して、この人にだったら協力しようと思ってもらえるようなコミュニケーションをとることで、信用残高を増やしていくようにしています。逆に、対面する記者の方にも、この分野であれば上村に聞いてみよう、そう思っていただけるように心がけています。一部では、広報は取材を受けたりして華やかじゃないかと思われがちですが、良い時も悪い時も社会と向き合わなければいけないのが広報。広報の仕事は、会社のブランドという見えない資産を構築し事業部の成果をかけ算で増やす仕事だと思っています。それが、広報として求められているものだと思いますし、そこが広報の価値だと思っているので、どうすれば独りよがりではない広報活動ができるかをいつも考えていますね。

伊藤:広報の仕事はまさに広報だけじゃできない。社内はもちろん、社外の記者とのコミュニケーションや信頼を重ねていくことは大切だと思います。では、広報の仕事をするうえで意識していることはなんでしょうか?
上村さん:まずは、時流・社流を見極めること。いくら会社が露出しても、この2つが外れていたら意味がないですから。あとはスピードですね。記者さんはお忙しい方が多いので、スピーディーな対応を心がけています。また最近、意図的に気をつけているのが社内コミュニケーション。事業部と定期的に打ち合わせをしたり、取材の依頼したりするときにも、的確な依頼な仕方、取材の背景などを、きちんと伝えるようにしています。そして、掲載されたらフィードバックをする。協力してくれた事業部の人が、自分のやったことの価値が分かるように、新聞に掲載されたらどのくらいとか、雑誌ならどのくらい、ネットニュースならとどのくらいという広告換算をして、伝えるようにもしています。細かいことなんですけど、そういうことを意識してやるようにしています。

伊藤:数字になると、事業部の方も分かりやすいですよね。ほかにはどういうことをされていますか?
上村さん:掲載記事は全社メールで告知をしているのですが、掲載にあたって協力いただいた事業部の方の名前を載せてメールを送っています。誰の協力があって掲載になったかを、全社に伝えるということです。たとえば「○○さんご協力いただきありがとうございました」といったようにですね。

伊藤:そこまでしてもらえると協力したくなりますね。
上村さん:もちろん、自分たちからすべての情報を取りにいければいいのですが限界はあると思います。ですから、記者の方など社外の方とのコミュニケーションだけではなく、社内ネットワークを構築することで、いろんな情報を集めることが大事ですよね。

伊藤:かなり人数も多いと思うので、それは本当にいい流れですね。今、社員数はどのくらいなんですか?
上村さん:グループ全体で約2000名。本体で約800名です。子会社には広報部門がある会社もあるのですが、広報担当者がいない会社については、私が広報を兼ねているため物理的な距離を超えるコミュニケーションが必要だと実感しています。

伊藤:では、これからやっていきたいことを教えてください。
上村さん:今進めているのが、モバイルコーポレートサイト。以前もあったのですが、定期的に更新ができなかったため、なかなか見られず閉鎖してしまったんです。最近はモバイルインターネットも浸透しモバイルサイトのクリエイティブも豊かになってきました。携帯らしさを生かした見られるモバイルコーポレートサイトを作りたいですね。ほかには、社内広報に力を入れたいです。当社はインナーコミュニケーションには力を注いでいて、非常にうまくいっていると思うのですが、より広報・事業部・経営陣の距離を縮めるような社内広報ができないか担当者と話をしています。

伊藤:例えば、どんな方法でしょう?
上村さん:例えば、社内限定の広報ブログを立ち上げるのもひとつの手かもしれません。ただ、見られないと意味がないので見てもらうための工夫は必須ですね。

伊藤:見てもらうという意味では、イントラネットで更新している、社内報は人気だと聞きましたが。
上村さん:そうですね。紙ではないのでアクセスしてもらわないと見てもらえないため「面白くなければ、社内報ではない」というテーマのもと、有志15名の部署横断のプロジェクトで更新しています。社内報「CyBar」での一番人気は、私の履歴書というコンテンツ。管理職の社員が生い立ちから今に至るまでを執筆するコーナーなのですが、仕事だけでは見えない意外性が見えたり、思わぬ共通点が見つかったり、今でこそ仕事ができる人として社内でも有名だけれども、実は新卒時代は同期のなかでも成績が最下位だったとか、いろんな社員のことを知れる場になっています。社内報は、できるだけ多くの写真をいろんな切り口で紹介することで、社内コミュニケーションを活性化させることが目的。更新をお知らせするメールも、面白い文章を書くのが上手な社員が担当して精読率を上げています。

上村さんお手製のパエリア

伊藤:「面白くなければ、社内報ではない」ってすごくいいテーマですね。そして、実際に読んでもらえているということで作る方にも力が入りますね。では、最後に少しだけプライベートのお話を聞かせてください。週末はどんな風に過ごされていますか?
上村さん:野菜が好きなので、美味しい野菜を取り寄せて料理していますね。今の季節だと、生で食べられるトウモロコシがすごく甘くてハマってます。食べ歩きも料理も好きなので、レストランで食べた美味しかった料理を家で再現してみたり。あとは、サイクリングをするのも好きですね。銀座や築地まで自転車で行くことも多いです。

伊藤:休日をすごく楽しんでいらっしゃることが伝わりました。その休日があって、仕事が頑張れるんですね。今日は、ありがとうございました。

 


広報ウーマン24時
6:30 起床 朝食を食べた後、フットマッサージャーでマッサージをしながら、ニュースのチェックと身支度
8:00 出勤 日経新聞やビジネス誌に目を通し、携帯で役員や社員のブログをチェック
8:30 出社 メールチェック、記者さんへ掲載記事の御礼メール
9:00 朝会後、広報メンバーとのタスクミーティング、クリッピングのチェック
10:00 原稿確認、プレスリリース作成・確認、事業部への掲載報告など
11:00 雑誌取材
12:00 ランチ 他社広報の方や、部署メンバーとランチもしくは、持参したお弁当を席で食べながら、ランキング上位のブログをチェック
13:00 テレビ取材(社内撮影)
16:00 社内打ち合わせ(新たなサービスのヒアリング、ネットプロモーション実績の確認など)
18:00 新聞・雑誌からの電話問い合わせ対応、コーポレートサイトの変更内容の確認など
20:30   退社 記者さんや他社広報の方との食事、社内の懇親会へ(週2回程度)予定のない時は自宅で食事 帰宅時間に携帯で他社サービスをチェック
21:00 ニュース番組やバラエティ番組などをチェックしながら新たなPRネタ探し。家事・入浴・ストレッチ
24:00 就寝


編集後記
取材のときに、サイバーエージェントビルの存在を知って驚きました。どうしてもマークシティのイメージだったので。でも、実際に行ってみたら、とても素敵な空間で、感激しました。大きいアメーバくんも存在感を出していました。上村さんとは、ランチをさせていただたときに、インタビューのお願いさせていただたのですが、その場で快く受けていただき、本当に感謝です。急成長してきた会社の広報を創設期から見ていらっしゃるということで、どんな広報をされてきたのかとても興味がありました。そして、お話して、10年という時間、会社とともに歩んでいらっしゃって、本当に会社のことを愛していらっしゃるのが、伝わってきました。経理や社長秘書という他職種の経験をとてもうまく広報に生かしていらっしゃるところも、本当にすごいと思うところです。そして、何よりビューティでクレバーという印象通りの方、でも、とても気さくで。アメブロが愛されている理由が分かった気がしました。見習いたいところがたくさんある方でした。(伊藤緑)

photo by eiji yamagata(社内写真)