安部美希さん 株式会社グローバルダイニング

株式会社グローバルダイニング 安部美希さん(2019年4月)

株式会社グローバルダイニング:https://www.global-dining.com/

アパレルから飲食へ。46年続く企業の「お客様がすべて」という創業者の思いを伝える女性

伊藤:本日は、お忙しいなかありがとうございます。表参道にモンスーンカフェがあることを知らなかったので、びっくりしました。こちらはいつオープンしたんでしょうか?

安部さん:2014年にオープンしました。モンスーンカフェは25年以上前からありますから、いろんな年代の方にご利用いただいております。

伊藤:そうですね。私も利用させていただいています! さっそく、本題へ。安部さんは、もともと飲食の広報ではなかったと先日ちらっとお聞きして、ぜひお話を聞きたいと思っていました。これまでのお仕事を教えてください。そして、どんな流れて広報職に就かれたのですか?

安部さん:大学時代に、どんな仕事をやりたいかと考えたとき、ざっくりとしたイメージで広報か雑誌の編集をやりたいと思ったんです。どちらの仕事も今はどんな仕事かよく分かるのですが、当時は分からないままイメージの部分もありまして。編集の仕事ならファッション誌をやりたいと思ったので、大手出版社を受けました。でも、面接で進んでいくなかで大手出版社は「ファッション誌」だけを扱っているわけではないことに気づいて。

伊藤:そうですよね。そもそも編集部に入れないかもしれない。広告営業もありますし、経理や総務、広報だってあります。そして、編集に入っても、週刊誌、情報誌、専門誌など、いろいろありますよね。

安部さん:そうなんです。そこで、希望通りファッション誌の編集ができるわけじゃないという現実に気づいたんです。だったら、まずはファッションの会社に就職しようと思い、当時インポートで憧れていたブランドを扱うワールドという会社に入ったんです。ワールドは当時、入社して3年はみんな現場(売り場)で実務経験を積まなければ自分の希望の職種に就くことができず、南青山の路面店に配属になりました。

伊藤:南青山ですか! そして、路面店。憧れの場所のような気がしますが……

安部さん:そうなんです! とても幅広い層のお客様が来てくださる店舗ででした。そこで、お客様のことを知ってコミュニケーションを深めるということを学びました。その経験は本当に大事だったし、ありがたかったと思います。ただ、そんな中でも広報をやりたいとという思いはずっとあったんです。店舗では、メディアの方に洋服の貸し出しをするなど、広報の一部である仕事はやらせていただきそれで、メディアの方やスタイリストの方はこういう人たちなんだと知ることができました。それも楽しかったです。そして、何より自分がお渡しした洋服が世の中に広まっていくのが楽しかったんです。

伊藤:雑誌に掲載されたり、モデルさんが着たりするのを見るのは嬉しいですよね。

安部さん:そうなんですよ。そして、路面店だと特にだと思うのですが、自分にお客様がついてくださるんですよね。私のところに買いに来てくださったり、近くに来たからといって顔を見せに来てくださったり。それが喜びでもあるんですが、そういうことがあったので、3年経ったので「はい、異動します」ということができずに月日がどんどん経ってしまって……。

伊藤:3年で異動できなかったんですね。何年いらしたんですか?

安部さん:ワールドには、6年くらいですね。

安部さん:このままではと思い転職を考えました。広報をやりたい気持ちがずっとあったのと、一度、日本の会社以外でPRにチャレンジしたいと思ったんです。そんなときに、イタリアのブランドで広報をやらないかというお話をいただきました。

伊藤:広報としての中途採用ということですか?

安部さん:そうですね。広報の仕事については見てきたものがあるので、何となく分かるのですが、人脈が伴っていなかったので、一から人脈を作っていくことになりました。スタイリストの方との繋がりを作るために展示会を開いて、そこで交流を深める。そのためには何かしよう、と考えて、ショールームにヨガの先生をお呼びしてヨガ教室をやったり、お菓子を持って行って皆さんの息抜きの場にしてもらったり、とイベントを企画したりしました。ただ洋服を見て帰るだけの場にしないように。そうしたらスタイリストの方とコミュニケーションが取れるようになり距離が縮まりました。今でもその方々たちには助けていただくことは多いです。扱う商材は変わっても、スタイリストの方はいろいろなところで繋がりがありますから、ライターさんをご紹介いただくこともあります。

伊藤:確かにそうでうね。スタイリストの方は、複数の出版社、編集部との繋がりがありますからね。ファッションのPRのあと、変化があるんですか?

安部さん:そうなんです。その後、社内で化粧品事業を始めることになり、そこでPRをやってほしいという話があって、初めてファッションから離れた仕事をすることになりました。ファッションと化粧品の違いは、配る品物があるという点ですね。ですので、キャラバンを行いました。

伊藤:なるほど。服は、お一人ずつにお渡しできないですものね。

伊藤:他にもファッションとは違う点はありましたか?

安部さん:伝える方法が全然違ってくるんです。化粧品だと薬事法なども関係してきます。例えば「この化粧品を使うと白くなる」というような表現は使えないんですよね。人によって合う、合わないがあるので過剰に表現してはいけない。ですので、表現を制限しつつどう伝えられるかということがとても重要でした。ファッションとは全く違うリリースの書き方ですね。でも、キャラバンに行って説明すると、とても喜んでいただけるので、その点はとても良かったです。物があるってありがたいと思いましたね。その会社では、韓国の化粧品を扱っていたので、毎月韓国に行ってバイイングもしていました。ちょうど韓国化粧品が流行り始めた時期ですね。

伊藤:確かに。韓国化粧品は人気ですよね。韓国の本社に行って、商品の説明を聞き、どう使うか、どのようになるか、を学ぶということでしょうか?

安部さん:そうですね。あとはお客様にどう説明するかです。バイイングしていく中でPRするお客様を頭の中でイメージしながら、どう伝えたらいいのかなどを考えていました。店舗が複数あったので、スタッフとのミーティングのために飛び回っていました。その後に化粧品部門の営業形態が変わることになって。そこで改めて考えてみた時に「もっと広報を深掘りしたい」と思いました。結婚のタイミングもあったので、一旦立ち止まろうと思い、その会社を辞めたんです。

伊藤:立ち止まってご結婚されたときは、少しお休みを取られたんですか?

安部さん:一か月くらい?

伊藤:え! それって、新婚旅行で終わりみたいな。ほとんど間があいてないですね!

安部さん:そうですね(笑)

伊藤:そして、グローバルダイニングさんに入られるんですね。

安部さん:そうです。パートナーが食の世界の人間なので、食の世界の面白さや大変さを共有できたらいいなと漠然と思ったのが、食の世界に入ったきっかけのひとつですね。

伊藤:ご夫婦での共有、素敵ですね。

安部さん:パートナーはソムリエでもあり料理人でもあるのですが、基本はサービスをする側なので、お客様それぞれの時間の使い方によってアレンジするお店作りなどの思いを共有できますね。将来的には一緒にお店に関われたら面白いですね。

伊藤:でも、まだこちらの会社でもやりたいことがたくさんあるんじゃないでしょうか? 今年5年目でしょうか? 新しい展開や変化を考えてらっしゃいますか?

安部さん:弊社は今年で46年目なんですが、一貫して言い続けていることは「お客様がすべて」なんです。良いお料理をお出しして、良いサービスをして、お客様のことをしっかり認知して次に繋げていくことがすべて。広告費をかけることなく、お店の底力をあげるという考え方ですね。例えばモンスーンカフェはエスニック料理店の火付け役にはなったのですが、今では、エスニックのお店も増えました。じゃあ、その中で埋もれないためにどうするか、という過渡期に来ていると思っています。

伊藤:同じことを続けていっても難しいということですね。

安部さん:そうですね。発信することで知ってもらって、次に繋げる。それは同じなのかもしれませんが、お店によって注力するポイントはそれぞれ違うので、アンテナを張り情報はフレッシュな状態で共有・発信するようにしています。定期的に代表と直接ミーティングをして、方向性の確認は必ずします。お店とのバランスを考えてPRすることを大事にしていますね。弊社はオープンに議論をするので、それぞれの店の状況がリアルに入ってきます。

伊藤:良いところも悪いところもということですよね?

安部さん:良いも悪いもです。お店によって温度感に違いがあるので、どうバランスを取るかなどを店長やチーフ、料理長にヒヤリングします。

伊藤:全店舗ですよね。ちなみに今何店舗あるんですか?

安部さん:51店舗ですね。国内に49店舗、海外に2店舗です。業態は1店舗しかないものもあるのですが、16業態。

伊藤:それを全部ですか? それぞれの店長さんと「ここのお店はこうだ」とか「こっちのお店はどうするか」など相談するんですね。

安部さん:受け身ではなく料理長自ら、新メニューをリリースしたいという店舗もあれば、今はベースの料理をより美味しく作ることに注力したいという店舗もあります。人員的に強いかどうかの確認も必要です。PRしたことでお客様がたくさんいらっしゃったときに対応できないとそれは逆効果になってしまうので。メディアの露出前には、必ず確認しています。

伊藤:それは、広報としてはとても大切なことですね。

安部さん:そうなんです。ですので店舗ごとの温度感はとても重要なんです。

伊藤:今、どこに力をいれるかを見極めていくわけですね。

安部さん:原宿にオープンした「権八 NORI-TEMAKI 原宿」は海苔手巻き専門円で糖質オフのカリフラワーライスを使用した手巻きが食べられると多くのメディアに取り上げていただいています。「カフェ レガート」はカジュアルイタリアンで2018年末にリニューアルしました。15Fでロケーションも良いですし、バレンタインなどのイベントやシーズンは、盛り上げていけたらなと思います。

伊藤:シーズンといえば、先日オープンした、タコス専門店のお店は目黒川の近くなので、桜の季節は人員的にも準備が必要ですね。

安部さん:それはありますね。それもですが、タコス専門店「タコファナティコ」はキャッシュレスの店舗なんです。現金使えないんですよ。すべて電子マネーやクレジット決済となります。日本政府もキャッシュレス化を進めていくということで。もともとは2年前オープンしたサラダの専門店でキャッシュレスをやりたかったのですが、店舗が駅から遠かったということもあり見送りました。「タコファナティコ」は駅も近いですし、チャージという意味ではなんとかなるので、このタイミングでキャッシュレスを始めることにしました。キャッシュレスという意味では、リーディングカンパニーである私たちが試験的にチャレンジしていく部分もあります。ただ、それを始めるのは既存店ではなく、新しいコンセプトであることが必要だった。駅も近く立地的にもタイミングも良かったので、スタートしました。

伊藤:他社さんを含めて、キャッシュレスのお店はまだ少ないんですか?

安部さん:そうですね、まだまだ多くはないですね。他の飲食の店でもやってみたいけれど踏み切れないという話をよく聞きます。ただ、弊社はやってみて違ったら辞めればいいというチャレンジ精神がある会社なんです。新しいシステムも良いものは良いものとして受けいれていこうと。いろんなご意見があるかと思いますが、踏み切りました。PayPayさんやLINE Payさんのキャンペーンもあり、反応は悪くないですね。会社として新しいことをやってみるという姿勢は、大事にしていきたいと思っています。

伊藤:代表の方は、創業社長さんですよね。46年前に創業した。

安部さん:そうです。高田馬場のコーヒーショップから始まった会社です。今も代表は、自ら各店舗を周っています。本当に現場を愛してますね。社員の名前も覚えていますし、社員に対して、お客様の名前を覚えなさい、「リコグニションが大事」というのも納得です。

伊藤:会社というか、代表の方の思いが隅々まで伝わっている感じがします。話が変わりますが、リリースについて聞かせてください。例えば化粧品のリリースだと「新色が出ました」や「ラインナップが増えました」だと思うのですが、飲食店は新たに新店舗をオープンします以外のリリースは、どのようなものがありますか?

安部さん:広報=リリースっていうイメージはありますよね。「リリースを出したらこんなことが起こると」というのを店舗に伝えていくのも私たちの仕事だと思っています。例えば、去年成功したことと全く同じことをやるのも良いのですが、それをリリースするのであれば、少なくとも伝えるメッセージに希少性があるか、独創性があるかみんなにとって嬉しい情報になっているかどうかが大切なんです。押しつけがましく同じ情報を出すのではなく、どこかをブラッシュアップする、それを店舗と一緒に考えましょう、という話をしています。毎年、苺のシーズンが来ますが、同じ苺でも、店舗によって違うリリース出すということですね。

伊藤:ちなみに、リリースは月にどのくらい書いていますか?

安部さん:月に、4、5本ですね。多い時は7本ですね。

伊藤:配信はメールですか?

安部さん:メールです。

伊藤:メールを送るためには、記者の方にメールアドレスを教えていただく関係を作らなければならないと思うのですが、どのようにしていらっしゃいますか?

安部さん:私の場合は、リサーチャーの方(テレビ番組を作るための情報を探すリサーチ会社の方)にご紹介いただきます。もちろん、1度ご取材いただいたライターさんや制作会社の方に連絡を取ったりは当然あります。

伊藤:リサーチ会社さんは大切ですよね。実は私、リサーチ会社で派遣社員として働いていたことがありまして。それも今、財産になっていると思います。ちなみに、安部さんは他社の飲食店さんのリサーチはされますか?

安部さん:それは個人的にやります。会社の業務としてではないですね。悪いところを見るというのではなく、どう料理しているか、それをどううまく打ち出しているのかを見たりします。

伊藤:やはり業界全体を見ることは大事ですね。自社のことに掛かり切りではなく。では、個人的にやるということで、個人というかプライベートなお話も聞かせていただけたらと思うのですが。ありきたりの質問ですが、趣味は何でしょうか?

安部さん:私、水引きが好きなんです。ちょっとしたご祝儀袋を作ったり、水引きでアクセサリーやワインマーカーなんかも作ったりします。水引を日常のテーブルの中に忍ばせる、という。毎日の生活のなかでは、ごちゃごちゃと色々考えてしまうじゃないですか? そういうときに、何を作ることに没頭するのは、頭がすっきりしますね。長野飯田の水引店に直接連絡して訪問したりして、現地に行って感じるということがとても好きなんです。金沢の加賀レンコン農家さんとか。旅も好きで今年は、スリランカやインドにも行ってみたいと思ってます。そして、時間があるときには「何も考えない」ということをやります。あとは、キャンプに行ってカレーを粉から作るのも好きです。山に登るのも好きですよ。北岳という日本で二番目に高い山にも登りました。

伊藤:水引き、カレー作り、登山。それだけで取材が来そうですね。それでは、最後に今後どうしていきたいかもお聞かせください。

安部さん:グローバルダイニングは、46年続いている飲食店です。もちろん波がありました。だけど、「やっぱりいいよね」って安心してもらえるような場所であり続けたいと思うんです。そして、そういう場にしたいと思っています。飲食店は、お店に来ることもイベントですし、同じレシピでも「あの店に行ってあの人に出してもらった料理がとても美味しかった」とか、そういう思い出も一緒についてくると思うんです。思い出にお金を払うというか、空間を楽しむというか。グローバルダイニングの店舗が、思い出を提供できる場所になったらと思います。長期的にライフタイムバリューを向上させることが重要で、また10年先も100年先もずっとあり続けるということが飲食店の最大の任務かなって思っています。ちょっと大きく言うとそのために常に進化し続ける環境づくりを、社内を含めて作れたらいいなと思っています。若いお客様だけでなく、オールターゲットだよって、代表も言うんですけどね。オールターゲットなので、2005年にどこよりも早く禁煙席を設け、化学調味料や合成保存料を極力使わないようにしました。安心して家族でも来ていただける店舗を目指しています。

伊藤:モンスーンカフェだったら25年前からあったわけですよね。同じ場所にある店舗さんに、最初は一人で来ていても、それが二人になり、家族になり、2世代、3世代と来る方々が増えていくというストーリーができますね。とても素敵ですね。

安部さん:そうなんです。店舗という場所に人が加わると「このスタッフさんに会いに来たよ」となって、もっとそのお店である意味やらしさが出るのかなと思います。そして、広報として、ファンを大切にしたイベントや企画の提供もしていけたらと思っています。

伊藤:最初に勤務したワールドさんのところに戻りますね!

安部さん:そうです! あの時の経験は今もとっても活かされていると思っています。家族でお店に来るというお話がありましたが、いらっしゃる方の成長や生活スタイルに溶け込むことのできるような場所にしたいですね。それはとっても素敵なことだと思うので。

伊藤:広報という仕事の域を超えていますね。飲食店は、人が生きていることに直に関わっている。そして、一緒に思い出を作ることができる。ただ、お腹が満たされて幸せというだけでなく、ここでこのスタッフの方にあって、おいしいお料理を食べて、心もお腹も満たされて。という空間なんですね。改めて、飲食店の広報の方の思いの深さを感じました。今日は、お忙しいなか、お時間をいただき、ありがとうございました。

編集後記

広報ウーマンネットでインタビューをさせていただいている方は、いくつかの企業の広報をされてきた方か、独自の広報スタイルを持っていらっしゃる方が多いです。安部さんとお会いして、少しお話しをお聞きしたときに、この方にインタビューしたい!と思ったのは、店長の方とのコミュニケーションを密にとっていらっしゃる方だと思ったからです。その理由に、アパレルの仕事での経験があって。やはり仕事はつながっているなと感じました。業態の違う飲食の店舗を持つ企業さんが多いですが、安部さんは販促などもされているようでびっくりしました。同じ時期に食材が同じでも全く違うリリース作ってメディア掲載につなげる。そして、常に新しいことへの挑戦。創業者の方の思いが、広報に反映されていると感じた取材でした。リコグニション(お客様のことを覚えている能力)は、外食産業では当たり前のことなのかもしれませんが、広報に関わる人間にはみな必要なことだと改めて感じました。(伊藤緑)

ライティング協力:原田寛子さん

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